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【せう先生のスマホ講座】第69回:搭載機が続々登場!Qualcommの「Snapdragon 835」は何がすごい?

GAPSISをご覧の皆さん、「せう」です。こんにちは。つい一昨日まで仕事で台湾に出張していました。なかなか色々あって、疲れてしまいました……。

<▲図:Android端末の標準的プロセッサの1つ「Qualcomm Snapdragon」>

さて、アメリカのQualcommのモバイル機器向けプロセッサ「Snapdragon(スナップドラゴン)」は、Android端末の標準的なプロセッサの1つです。Snapdragonは、エントリー向けの「2xx」、ミドルレンジ向けの「4xx」「6xx」、ハイエンド向けの「8xx」と、大きく4シリーズあります。基本的には100の位がシリーズ、10の位が世代、1の位が性能クラスを表しています。

現在のSnapdragonのフラグシップは「Snapdragon 835」です。日本でも「Xperia XZ Premium SO-04J」「AQUOS R」や「Galaxy S8」「Galaxy S8+」といったAndroidスマホがこのプロセッサを採用しています。このプロセッサには、どのような特徴があるのでしょうか……?


■特徴1:8コアに「回帰」

<▲図:ARMが提唱する「big.LITTLE」テクノロジーをコアに採用>

Snapdragon 835のCPUコアは「Qualcomm Kryo 280」というものです。先代の「Snapdragon 820/821」は「Qualcomm Kryo」が2コア+2コアの4コア構成だったのに対し、4コア+4コアの8コア構成になりました。先々代の「Snapdragon 810」が「Cortex-A57」の4コア+4コアの8コア構成だったことを考えると、コア数的な意味では「元通り」になったともいえます。

Cortexコアはソフトバンクグループが買収したARMが設計したもので、KryoコアはQualcommがARMからライセンスを受けた上で独自設計したものです。

ARMアーキテクチャのマルチコアCPUでは、「big.LITTLE」という技術で省電力化を図っています。主にPCで採用されているIntelやAMDのマルチコアCPUが一律で同性能のものを搭載するのに対し、big.LITTLEでは処理能力の(場合によっては種類も)異なる「大きなCPUコア」と「小さなCPUコア」を搭載しています。負荷のかかる処理では大きなコア、アイドル時は小さいコアを使うという仕組みです。

Snapdraon 835でコアが4コア+4コアに「戻った」のは、処理速度を上げるにはコア数を増やすことが一番単純かつ効果的であるからだと思われます。


■「Gigabit LTE」に対応

<▲図:内蔵する「X16 LTE Modem」は下り最大1Gbpsの通信に対応>

Snapdragon 835に内蔵されているモデムは、「Snapdragon X16 LTE Modem」というものです。下り通信は最大1Gbps、上り通信は最大150Mbps(共にスペック上の理論値)通信に対応しています。

1Gbpsといえば光ファイバーインターネットクラスの速度。もっとも、電波を使うゆえに理論値に近い通信速度が出るのは難しいでしょうが、少なくとも従来よりも快適な通信ができることは間違いありません。

ただし、この通信スペックを生かせるかどうかは端末と携帯電話ネットワーク双方の対応状況によります。簡単に言えば、モデムが対応していることと実際に使えるかどうかは別問題なのです。日本ではNTTドコモのXi(LTE)ネットワークでSO-04Jか「Galaxy S8+ SC-03J」が出せる下り最大788Mbps(理論値)が最高ということになります。


■Windowsもサポート

<▲図:今後、PC(デスクトップ)版のWindows 10もサポート。
(画像はMicrosoftが公開したSnapdragon 820を使ったデモ動画から)>

Snapdragon 835が採用するKryo 280は、なかなかに強力なプロセッサです。それもあってか、Microsoftが現在開発を進めているARMアーキテクチャCPU用のWindows 10 Home/Pro/Enterprise/Education(以下まとめて「ARM版Windows 10」)における公式サポートプロセッサになっています。

ARM版Windows 10は、従来のIntel/AMD CPU用のWindows 10で動作する32bitプログラムが原則としてそのまま動作する(64bitプログラムは今後のOSアップデートで対応)上、動作制限も基本的にないため、より省電力で使い勝手的にも問題ないWindowsノートPCの登場が期待できます。

なお、Snapdragon 835で動くWindows 10は、昨日まで開催していた「COMPUTEX TAIPEI 2017」に合わせてQualcommがデモンストレーションを公開していました。Web検索すれば日本語のレポートも見つかると思いますが、なかなかいい感じで動いています。


ということで、なかなかハイパフォーマンスなモバイルプロセッサがSnapdragon 835、ということになります。続々登場予定の搭載スマホ(将来的にはノートPC)が非常に楽しみです!


記事執筆者プロフィール
せう
ブログ:せうの日記、Twitter:@shoinoue

静岡県三島市で産まれ、静岡県駿東郡長泉町で生まれ育ったアメリカ系日本人3世。見た目が日本人離れしている反動で、身の回りの道具は日本で開発されたものだらけである。ITmedia、andronaviを始めとするWeb媒体を中心に執筆活動を展開。自前のブログ「せうの日記」も宜しくお願いします。

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