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【一条真人的Androidライフ】第82回:不思議の国のAndroid

今年はAndroidにとって、まるで時間が止まったような年だった。春夏モデルとして登場した機種たちは高速なオクタコアCPUを搭載し、すばらしいパフォーマンスを持つかのように見えても、実用的には後退しているように思えた。

他社がヘキサコアCPUに移る中、オクタコアを採用したXperia Z5

これはオクタコアCPUが予想を超えた熱を持つため、高速で動かすとオーバーヒートするからだ。そのため高速性を生かせず、日常動作は低クロックのコアで動作させるのでかえって低速化してしまうという悪夢を招いた。

かくして、秋冬モデルではほとんどの機種からオクタコアCPUが消え、ヘキサコアCPUが採用され、確実に低速化した。半年前の機種よりも低速化した機種がいくつものメーカーから登場するという珍事が起きたわけだ。

これはまあ、そのプロセッサ(SoC)を提供しているメーカーの熱データが正確でなかったことが原因で、その数値をもとに設計した端末メーカーのせいではないのかもしれない。

Xperia Z5シリーズは3モデル全てでオクタコアCPUを採用する

そんな中でソニーモバイルコミュニケーションズ(以下、ソニーモバイル)の「Xperia Z5」シリーズは、相変わらずオクタコアCPUを搭載し続けている。Xperia Z5はヒートパイプを使って熱を逃がすという荒業を使っており、ついにスマートフォンもパソコンのような構造を持ち始めたことになる。

ヒートパイプを採用で冷却性能を上げたXperia Z5

この調子ならファンが搭載されるのも時間の問題で、「この機種はファンレスです」とかアピールされる時代が来るのかも? と心配してしまう。実際にはバッテリの駆動時間の関係でファンの搭載はないと思っているが。

その一方で、低価格スマホが非常に注目され、SIMフリースマホがブレークした。

本体価格3万円程度で実用性を持ったスマホが十分に可能であることが多くの人の目に明らかになってしまったのだ。

「最上位機種じゃなくても使えるじゃん」というのは急成長を続けたパソコンの成長が止まったときと同じような動きなので、今後はスマホもコモディティ化していくのは間違いのないことだろう。

そして、政府は唐突にスマホの通信料金に介入をはじめ、通信キャリアは迷走を始めた感がある。来年は日本国内でSIMフリースマホの販売がより増えることだろう。

それはそれで超低価格な戦いを生みそうで、クオリティが心配になる。まあ、そのあたりの評価でメディアとかブログは価値を発揮することになるのだろう。

なんにしても、2015年は本当に時間が止まったような1年で、まるで魔法の迷路に迷い込んだようだ(ちなみに、トレーディングの世界では、経済的な大きな影響を持つ発表がされる日を「ウィッチデイ」(魔女の日)という)。

これは何かの時代が変わることを、表しているのかもしれない。


記事執筆者プロフィール
一条真人
ITジャーナリスト
Twitter:@ichijomasahjito、Facebook:masahito.ichijo
ブログ:一条真人メモ

クラウドサービスからスマートデバイス、デジタルAVまで、デジタル関連のアイテムが大好き。「ハッカー」(日本文芸社)、「PCプラスワン」(笠倉出版)などパソコン雑誌の編集長を経て、小説なども出版して現在にいたっています。PC、IT関連の本は50冊以上書かせてもらいました。スマートフォンは初代Xperia(あまりに美しいデザイン!)、iPhoneなど数機種使っています。

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