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【せう先生のスマホ講座】第31回:2015年冬のフラッグシップスマホは「スペックダウン」!? でも、どうして?

GAPSISをご覧の皆さん、「せう」です。こんにちは。季節の変わり目は体調を崩しやすいですよね。自分もここ数年で一番体調を崩しています……。皆さんも、体調にはくれぐれも気を付けて下さいね。

ドコモの2015年冬のフラッグシップスマホの一部
(「arrows NX F-02H」と「AQUOS Compact SH-02H」)

10月に入り、大手キャリアの2015年冬商戦向けの新Androidスマホが順次発売されています。特にNTTドコモが顕著ですが、フラッグシップモデルだけではなく、従来あまりキャリアが力を入れていなかったミドルスペックモデルも充実しています。

そうなると、フラッグシップモデルは今まで以上にハイスペックに――なると思いきや、富士通やシャープのフラッグシップモデルの仕様を見ると、むしろ「スペックダウン」している部分があるのです。


■プロセッサーが「Snapdragon 810」から「Snapdragon 808」にスペックダウン

2015年夏のフラッグシップAndroidスマホの多くは、Qualcomm製の「Snapdragon 810」(型番:MSM8994)をプロセッサーとして採用しました。Qualcommのプロセッサーとしては現時点で最上位に相当するもので、CPU部は最大2GHzで駆動するコアが4つ、最大1.5GHzで駆動するコアが4つの計8コア(オクタコア)構成となっています。

シャープの夏モデル「AQUOS ZETA SH-03G」のスペック

一方、2015年冬のフラッグシップAndroidスマホでは、一部で引き続きSnapdragon 810を採用していますが、シャープや富士通のフラッグシップモデルでは「Snapdragon 808」(型番:MSM8992)をプロセッサーとして採用しています。Snapdragon 808のCPU部は、最大1.8GHzで駆動するコアが2つ、最大1.4GHzで駆動するコアが4つの計6コア(ヘキサコア)構成となっています。夏モデルでもauの「isai vivid LGV32」で採用していました。

シャープの冬モデル「AQUOS ZETA SH-01H」のスペック

Snapdragon 810と808は、CPU・GPU(グラフィックプロセッサー)の性能差と、メイン画面の出力最大解像度の違い(810は最大で「4K」【3840×2160ドット】、808は最大で「WQHD」【2560×1440ドット】)以外のスペックは共通ではあるものの、ここに来て810→808に変更するのは明らかな「スペックダウン」です。

なぜ、富士通とシャープはメーカーの“顔”とも言えるフラッグシップモデルにおけるスペックダウンを断行したのでしょうか。


■Snapdragon 810の発熱問題が原因か

その大きな要因と考えられるのは、Snapdragon 810が抱える「発熱問題」です。同プロセッサーは、確かにスマホ・タブレット向けのものとしては処理能力が高いのですが、その分発熱が大きいことが問題視されています。GAPSISの読者の皆さんなら、この夏の大きな話題だったのでよくご存知だと思います。

ハイスペックなCPU部だが、発熱もそれなりに大きく……

メーカーによっては、CPU部の制御をかなり厳密にやって発熱問題を解消しようとしましたが、結果的に新しいプロセッサーを採用する意味が正直薄いのではないかと思わざるを得ない感じになってしまいました。要するに「制限しないも(発熱による動作制限で)地獄、制限するも(本来のパフォーマンスを発揮できずに)地獄」という状況になってしまったのです。

一方、同世代のSnapdragon 808は性能と発熱のバランスが取れていて、810採用スマホのように過剰発熱に関する問題がほとんど発生していません。CPUやGPUに性能差があるのは確かですが、それ以外は810と同等の機能が使えますし、発熱で動作制限が多発するよりは、性能をフルに生かしても発熱問題が起きにくい808の方が全体的に快適である、と富士通とシャープは判断したものと思われます。

Snapdragon 810搭載の「ARROWS NX F-04G」と808搭載のisai vivid LGV32両方を使っている自分としては、この富士通とシャープの決断は良い方向に動くと考えます。両者のパフォーマンス差を感じるシーンは確かにほとんどありません。ベンチマークアプリやゲームアプリを使ってみるとF-04Gの方が描画がいい感じなのですが、熱でダウンすることも多いので、全体的には808搭載のLGV32の方が快適なのです(長時間負荷をかけるとLGV32も熱くなりはしますが、頻度は圧倒的に低いです)。

Snapdragon 808でも下り300MbpsのLTE-Advanced通信に対応する「AQUOS ZETA SH-01H」


■次世代の「Snapdragon 820」はどうなるか?

この状況をプロセッサーの開発元であるQualcommが看過しているとは思えません。来年には、Snapdragon 810の後継プロセッサーである「Snapdragon 820」を搭載するスマホ・タブレットが登場します。ここで発熱問題をどうにかしてもらわないと、結構いろいろ大変な気がしますが、どうなることやら……


記事執筆者プロフィール
せう
ブログ:せうの日記、Twitter:@shoinoue

静岡県三島市で産まれ、静岡県駿東郡長泉町で生まれ育ったアメリカ系日本人3世。見た目が日本人離れしている反動で、身の回りの道具は日本で開発されたものだらけである。ITmedia、andronaviを始めとするWeb媒体を中心に執筆活動を展開。自前のブログ「せうの日記」も宜しくお願いします。

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