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【せう先生のスマホ講座】第20回:ドコモがついに「4G」を名乗った! でも、4Gとか「LTE」って、何なの?(前編)

GAPSISをご覧の皆さん、「せう」です。こんにちは。この記事が載るのは5月1日の予定。大型連休まっただ中、あるいは直前ですね。今年は憲法記念日(3日)が日曜日、その後もみどりの日、こどもの日と祝日が続き、6日の水曜日に振替休日が来るという、会社の休みが原則暦通りという職場で働いている方にはある意味嬉しい年ですね。

ドコモ、ついに「4G」を名乗る……!!

それはさておき、NTTドコモ(以下、ドコモ)が3月27日から「PREMIUM 4G」のサービスを限られたエリアで開始しました。これは、「LTE-Advanced」(LTE-A)と呼ばれる次世代通信規格で盛り込まれた「キャリアアグリゲーション」(CAと略して表記されることも多い)技術を適用して、より高速に通信できるようにしたものです。

このPREMIUM 4G、移動体通信に詳しい人たちにとっては、ドコモがいよいよ「4G」をサービス名に使ったことへの感慨の方が強かったようです。ドコモにとっては、LTE-Aこそ真の4G、LTEは「3.9G」で、4Gじゃない、って立場なので、当たり前かもしれません。しかし、ドコモ以外に目をやると、auは「4G LTE」、ソフトバンクは「SoftBank 4G」「SoftBank 4G LTE」と、ドコモ的には4Gにあてはまらないサービスにも「4G」という名称を使っています。となると「4G」の定義とは一体何なのか、と疑問が湧いてきます。というか、そもそも「LTE」って何だよ、ってことになります。

そこで、スマホ講座では2回に分けて移動体通信(携帯電話)の世代を表す用語について紐解くことにしました。今回は、「第1世代」(1G)から、「第3世代」(3G)までを解説します。


■第1世代(1G)――アナログ方式

移動体通信で「第1世代」は(あまり聞かないかもしれませんが)「1G」(First Generation)と呼ばれます。この世代は、アナログ信号を電波に乗せて通信していました。

自動車電話から全てが始まった(写真はTZ-801型自動車電話)

日本では、日本電信電話公社(後のNTT、現在ではNTTドコモ)が1979年に自動車電話向けに提供を開始した「NTT方式」から移動体通信の歴史が始まりました。その後、持ち運びできるショルダーホン、そして手で持てるサイズの携帯電話が登場と、台数が増えてきたことから改良された「NTT大容量(ハイキャップ)方式」が登場します。この方式は、NTT移動体通信網(現在のNTTドコモ)と、日本移動通信(IDO、現在のKDDI)が採用していました。また、アメリカのAT&Tとモトローラが共同開発した「Total Access Communication System(TACS)方式も、当時激しかった日米貿易摩擦の緩和措置の一環として導入され、DDIセルラーグループ(沖縄セルラー電話(こちらの記事参照)以外は後のau、現在のKDDI)とIDOが採用しました。

一方、海外はどうだったのでしょう。北ヨーロッパでは、1981年に「Nordic Mobile Telecommunication System(NMT)方式」の自動車電話サービスが一部の国で始まりました。その名前で想像が付くと思いますが、エリクソンやノキアといった北ヨーロッパの通信関係企業が主導して開発したものです。

北アメリカでは、1983年にAT&TとMotorolaが共同開発した「Advanced Mobile Phone System(AMPS)方式」による移動電話サービスが始まりました。日本で導入されたTACS方式は、元々イギリスへ輸出する際にAMPS方式を仕様変更したもので、西ヨーロッパとアフリカの一部、中国、香港、シンガポールでも導入されています。


■第2世代(2G)と第2.5世代(2.5G)――デジタルへの移行と通信規格の事実上の統一

「第2世代」(2G)は、ユーザー増加への対処、秘話(通話内容を傍受されない)対策、データ通信への対応などを目的とした通信電波のデジタル化と、通信規格の統一がテーマとなりました。

先述のTACS方式、NMT方式と、国ごとに異なる規格を採用していたヨーロッパでは、2Gにおける統一規格を策定する機運が高まっていました。結果、イギリスの提案をベースに誕生したのが「Global System for Mobile communication(GSM)」方式です。GSMでは自動的に国際ローミングできる仕組みや、契約者を識別するためのICチップ「Subscriber Identification Module(SIM)カード」など、現在に至るまでの基礎的な仕組みが取り入れられました。ヨーロッパでは官民総出で普及活動をしたため、日本と韓国以外の全世界で採用され、事実上の標準(デファクトスタンダード)となりました。のちに、データのやりとりをパケット通信で行う「General Packet Radio Service(GRPS)」、その通信を高速化した「Enhanced Data GSM Environment(EDGE)」が追加で策定されました。

今でも世界で一番広く使われるGSM方式

一方、日本では、電波システム開発センター(現在の電波産業会)が開発した「Personal Digital Cellular(PDC)方式」を、NTT移動体通信網グループ、IDO、DDIセルラーグループ、そして、この世代で新規参入したデジタルホングループ・デジタルツーカーグループ(後のジェイフォン、ボーダフォン、現在のソフトバンクモバイル)とツーカーセルラー・ツーカーホングループ(現在のKDDI)全てが採用しました。まさしく、「日本統一規格」というわけです。この方式をベースとして、北米で「Digital Advanced Mobile Phone System(D-AMPS)方式」が開発されましたが、広く世界で使われることはありませんでした。

日本は独自のPDC規格でデジタル移動電話サービスを開始
(写真は、初代デジタルムーバシリーズ)

GSMやPDCが開発されてしばらく後、1995年にアメリカのQualcomm社が「cdmaOne方式」という独自規格を開発しました。GSM・PDCが「TDMA(Time Division Multiple Access)」(時間分割多元接続)という方法で通信しているのに対し、cdmaOneではその名の通り「CDMA(Code Division Multiple Access)」(符号分割多元接続)という方法で通信しています。この方式では、携帯電話の収容台数を増やせるという大きなメリットがあります。また、GSMやPDCと比較すると音質が良く、音質重視のユーザーには朗報でした。日本では、IDOとDDIセルラーグループがPDCを置き換えるかたちでcdmaOneの採用を決定します。

クリアな通話を売りにしていたcdmaOne


■第3世代(3G)――ふたつの「CDMA」がぶつかり合う

「第3世代」(3G)は、国際連合の機関のひとつ、国際電気通信連合(ITU)において1985年から、標準化の検討が始まりました。高速データ通信、テレビ電話など、音声通話にとどまらない広範なサービスを提供するとともに、第2世代でも結局統一できなかった通信規格の標準化を目指したのですが、結局、複数の規格に分かれてしまいました。その中でも特に大きな勢力となったのが「W-CDMA方式」と「CDMA2000方式」です。

<W-CDMA(Wideband-CDMA)方式>

実は、W-CDMA方式、ドコモが開発した「FOMA」がベースって知ってました?

W-CDMA方式は、元々、NTTドコモが3G規格として開発を進めてきたものがベースとなっています。ドコモはPDCにおいて携帯電話環境が世界から孤立した反省を踏まえ、SIMカード(※1)の採用、国際ローミング方法など、2GでデファクトスタンダードになったGSMの仕組みを大きく取り入れ、開発過程でヨーロッパの移動体通信機器事業者(ノキア、エリクソンなど)が参画して「日欧同盟」的な規格となりました。特徴としては、回線交換型のテレビ電話(ISDNのそれと互換性あり)が使えること、音声通話とパケット通信を同時に行える「マルチアクセス」ができることなど、2Gから大幅な進化を遂げました。一方で、GSMやPDCといった従来規格とは互換性が全くないため、ネットワーク面では、機器の取り替えが必要で、端末側でも従来規格に対応するためにはハードウェアの追加が必要という大きなデメリットがあります。

(※1)3G規格でのSIMカードは、機能拡張されていて、正しくは「UIM(User Identification Module)カード」または「USIM(Universal SIM)カード」と呼びます。厳密さを重視する人に「ドコモのSIM」とか言うと、「え、ドコモはUIMだよ。2G専用カードじゃないでしょ!?」とか言われてしまうことがあるかもしれませんw

世界初のW-CDMA電話機「N2001」(NTTドコモのサポートページより)

ドコモは、2001年に「FOMA」という名称をつけて、W-CDMA規格のサービスを開始しました。しかし、自分が世界で最先端であることをアピールすることを急ぎすぎたのか、IMTの正式規格として確定する前にリリースしてしまい、海外で「Universal Mobile Telecommunications System(UMTS)」という名称で始まったIMT準拠のW-CDMA規格と一部仕様面で差異が生じてしまいました。その後、差異をネットワーク・端末面で吸収するのに、しばらく時間がかかってしまいました。また、特に初期はエリアが狭すぎることやバッテリー持ちがものすごく悪いことから普及が進みませんでした。

正式規格策定後の2002年末、ジェイフォンが「Vodafone Global Standard(VGS)」(のちのVodafone 3G、現在のSoftBank 3G)という名称で国際規格にも準拠したW-CDMA規格のサービスを開始しました。こちらは、後発故に、ヨーロッパ市場で販売する端末をほぼそのまま日本でも販売することができたのは大きな成果でした。しかし、端末の動作が不安定すぎたり、操作体系が日本の携帯電話と全然違うことなどから不評が不評を呼び、後に日本の携帯電話の操作体系に準拠したモデルが投入されることになります。

Vodafone Global Standard初号機となったV801SA

世界に目を向けると、GSMでもEDGEでW-CDMA規格並みの速度で通信ができること、先述のとおり機器を取り替える必要があり、相当の設備投資が必要であることから、ドコモや通信機器会社が思うほど速やかには普及せず、設備更新に合わせてじわじわ広がっていく感じとなりました。現在では、GSMでとどまっている一部を除き、世界に広く普及しています。中には、後述の「もうひとつの3G」であるCDMA2000規格に追加、あるいは置き換えるかたちでW-CDMA規格を導入する地域も出てきています。


<CDMA2000方式>

auの初代CDMA2000 1x対応電話機たち

CDMA2000方式は、cdmaOneを策定したQualcommが、それを拡張してIMTの3G規格に準拠させたものです。ネットワーク面では、cdmaOne用基地局を最低限の改修で対応でき、端末側はcdmaOneエリアでもそのまま使えるという、コスト面での大きな利点があります。一方、音声通信とパケット通信を同じ帯域で共用しているため、音声通話をしているとパケット通信ができない、逆もまた然りと、マルチアクセスが事実上できないという大きな欠点があります。

日本では、2002年からKDDIと沖縄セルラー電話がサービスを開始。ネットワーク、端末両面で苦戦していたW-CDMA陣営のドコモ・ボーダフォンを尻目に急速に普及、au黄金時代へと至る道のりを築いていきます。現在でも、VoLTE非対応端末の音声通話と、ごく一部のエリアにおけるパケット通信に使われています。

世界では、ヨーロッパを除く地域で普及しましたが、W-CDMA規格のサービスを追加、あるいはCDMA2000規格のサービスをW-CDMAあるいはLTEに置き換える動きもあり、国・地域によっては全廃されてしまっている場合もあります。

ということで、今回は3Gまで解説しました。この後、3Gを拡張する「第3.5世代」(3.5G)や、第4世代への“つなぎ”として登場する「第3.9世代」(3.9G)の規格が出てくるのですが、ここから「4G」という言葉の定義が混迷を極めていきます。この辺は次回をお楽しみに!


記事執筆者プロフィール
せう
ブログ:せうの日記、Twitter:@shoinoue

静岡県三島市で産まれ、静岡県駿東郡長泉町で生まれ育ったアメリカ系日本人3世。見た目が日本人離れしている反動で、身の回りの道具は日本で開発されたものだらけである。ITmedia、andronaviを始めとするWeb媒体を中心に執筆活動を展開。自前のブログ「せうの日記」も宜しくお願いします。

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