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【取材レポート】モバイル&ワイヤレス専門の展示会「ワイヤレスジャパン2013」は熱かったか?

東京ビッグサイトで5月29日から31日に開催されたモバイル/ワイヤレスの専門展示会「ワイヤレスジャパン2013」。このイベントの取材に行ってきたので、関心を持ったブースをいくつかピックアップしてレポートしたい。

ワイヤレスジャパン2013の看板。会場は東京ビッグサイト。

やっぱりここにもいる通称ドロイド君(正式名称は「Bugdroid」君らしい)。


■近距離通信関連(Bluetooth、ZigBee)

「ワイヤレス」と言っても、携帯電話などのような長距離通信だけでなく、BluetoothやZigBeeなどの近距離通信関連のブースも出ていた。ZigBeeは近距離無線通信規格の一つで低消費電力という魅力を持つ。ここでは、日本メーカーではNECが展示をしていた。ZigBeeは最近では低消費電力なホームユースの通信に焦点を絞っており、北米では結構ポピュラーな存在だ。日本でもスマートホームやスマートオフィスなどを手掛けるNECがこの辺りに力を入れていても不思議はないが、主な市場はやはり北米のようだ。

ZigBeeのブースではNECが展示を行っていた。 

NECのZigBee対応モジュール。

日本のユーザーにとって、ZigBeeよりも身近な存在のBluetoothだが、こちらもバージョン4.0でとても低消費電力になったことで、今まで以上に様々なものに組み込まれていきそうだ。ここではカシオ計算機の「G-SHOCK」シリーズ、ナイキのスポーツ向けデバイスなどが展示されていたが、「CEREVO」も力を入れていた。

同社の「SmartTrigger」は一眼レフカメラに装着し、スマートフォンからシャッターを切ることができるリモートシャッターデバイスだ。リモート操作の媒介になるのはBluetooth。また、逆にスマートフォンのカメラのシャッターをSmartTriggerからリモート操作することもできる。ちなみに現時点では対応するのはiOSデバイスのみだが、将来的にはAndroidにも対応する予定という。

SmartTriggerは、体に装着したり、手に持った状態でジャンプをすることでカメラのシャッターを切ることもできる。こうした変則的な使い方ができるのも面白そうだ。

普通にやろうとすればジャンプした瞬間を写真に収めることは難しいが、SmartTriggerを使えば、センサーによってジャンプした瞬間を感知し、自動的にシャッターを切れるので、呆れるほど簡単だ。

SmartTrigger。

SmartTriggerの利用例。 デジタル一眼レフのシャッターを切ったり、スマートフォンのシャッターを切ったりできる。

スマートフォン向けアプリにはジャンプ撮影機能があり、SmartTriggerを持った人がジャンプした瞬間に撮影できる。

なんとBluetooth搭載歯ブラシまである。


■ワイヤレス充電システム

ワイヤレスでバッテリーを充電する「ワイヤレス充電」関連の出展もあった。自動車関係ではワイヤレス充電と言えばTDKやパイオニアが有名だが、スマートフォンも含めた各種家電製品のワイヤレス充電規格としては「Qi(チー)」が有名だ。しかし、まだ、このジャンルは始まったばかりという感じで、Qi以外の規格の製品も展示されていた。

その標準化団体がA4WP(Alliance for Wireless Power)であり、クアルコムの「WiPower」という技術を推進している。WiPowerのQiとの違いは、磁界共鳴方式の採用によって、充電のスポットが限定されないことだ。Qiの場合、充電台上の充電可能スペースはコイルの上に限定されている。ムービングコイル方式を採用した製品の場合はスペースは限定されないが、それでもコイルの上に充電対象物を置かなければならないことには変わりない。一方、WiPowerの場合は、方式が異なることから、位置が自由だ。そのため、複数のデバイスを同時に充電することもできる。

さらに、充電パネルから4センチ程度離しても充電できるため、充電パネルを既存のテーブルなどの背面に設置するだけで、WiPower対応テーブルとして使うことができるので、設置コストを抑えることが可能だ。この設置コストを抑えられるという点は、一般普及に向けて大きな強みだ。

複数台の端末を同時に充電できる。手帳程度のサイズのものが間にあっても問題なく充電できる。

テーブルの天板程度の厚みであれば、間にあっても問題なく充電できるので、
既存のテーブルの裏にパッドを取り付けるだけで、手軽にワイヤレス充電テーブルが出来上がる。


■Firefox OS

最近ではiOS、Androidに続いて、スマートデバイス向けの新しいOSがいくつか提案されている。それが「Tizen」や「Firefox OS」だ。ワイヤレスジャパン2013では、Mozilla JapanがFirefox OSの展示を行っていた。

Mozilla Japanのブース。
展示ブースではいくつかのメーカー製の端末が用意されていた。筆者が触ってみた端末はスペインのGeeksphone社のものだったが、デュアルコアCPU程度の、あまり高速ではない端末で、現在のAndroidスマートフォンと比較すると、ややぎこちない動作を見せていた。Android OSのバージョンが1.x辺りだった頃を思い出すような動きだが、国内でのFirefox OS搭載端末の登場は来年以降とまだ先なので、現時点でその動作のスムーズさを評価することにはあまり意味がないだろう。

おそらく来年になればスマートフォンをドライブするCPUの処理速度は現在の約2倍程度になっていることだろうし、さらにソフト面での開発及び最適化が進めば、そこそこ実用的な動きを見せるようになるのではないだろうか?

ちなみに展示ブースには日本語入力アプリの「Wnn」の開発版がインストールされた端末も用意されており、フリック入力もできるようになっていた。

このブースには極めて人が多く、展示機も大人気だった。

Firefoxのマスコットキャラクター「フォクすけ」のぬいぐるみ。

Firefox OS搭載機。

開発中の日本語入力システム「Wnn」のFirefox OS版。フリック入力もできる。

Geeksphone社のFirefox OS搭載端末。


■通信キャリア

ワイヤレスジャパン2013における携帯電話事業者関連の展示はKDDIとNTTドコモ(以下、ドコモ)くらいだった。KDDIについては、KDDI研究所がブースを出し、様々な技術を紹介していた。中でも目玉とみられた技術は、現在のLTEよりも3倍高速に通信できるというAdvanced MIMOだ。

KDDI研究所のブースでは、Advanced MIMOの展示を大きく行っていた。

Advanced MIMOでは周波数利用効率が20bps/Hzに達する。

展示されていた基地局装置の一部。

一本の光ファイバに複数のコアを持たせるマルチコア光ファイバの展示。


NTTグループのブースでは、通信技術の解説に加え、700MHz帯に対応したドコモの基地局アンテナなどが展示されていた。


ドコモの700MHz帯対応のマルチバンド基地局アンテナの展示。


■日本Androidの会

国内でAndroidの普及促進を目指す活動を行うコミュニティ「日本Androidの会」もワイヤレスジャパン2013にブースを出していた。実は、我々がこのブースに到着した時は、すでにイベント終了間際だったので、ブースの内容を見ることはほとんどできなかった。しかし、メイドの方が2名来て、支部の紹介を簡単にしてくれた。彼女たちはソフトもハードもこなすそうなので、将来の日本ギーク界を背負って立って頑張って頂きたいと本気で思った。

日本Androidの会のブース。このブースに来た時間が遅く、すでに片付けが始まっていたが、
日本Androidの会には多くの支部があり、様々な活動が行われている。

秋葉原支部 支部長の黒崎エリカさん

有村しおんさん


■CACHATTO(カチャット)

CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)のブースでは、e-Janネットワークスの「CACHATTO(カチャット)」などが展示されていた。CACHATTOは法人向けサービスで、スマートフォンやタブレットなどの端末から、社内システムにアクセスし、メールやスケジューラー、アドレス帳、グループウェアなどを利用できるリモートアクセスサービスだ。

CACHATTOではクライアントとなるスマートデバイス側にはデータが残らないので、企業としては安心して使うことができる。仮に端末を紛失したとしてもデータの漏洩を防げるわけだ。様々なデータを社員に持ち出すなと言っても、実際には完璧にコントロールすることは難しいので、CACHATTOのようなソリューションで、いちいち持ち出さなくても済むシステムを用意する方がクレバーだろう。

このCACHATTOが以前のバージョンよりも大幅に進化しており、UIの使いやすさなどの変化に加え、ファイルサーバーまで使えるようになっている。どこにいても社内データに安心してアクセスできるのは便利だろう。

今回CTCのブースでCACHATTOが紹介されていたのは、同社のグループ会社がe-Janネットワークスと販売代理店契約を結び、販売を行うためだ。

CACHATTOの展示ブース。

iPadでのデモ画面。


■その他のブース

 IIJのブースでは、MVNOによる通信サービスが目立つ場所で展示されていた。

スマートデバイス向けのアクセサリやバッグなどの展示、販売が行われたブースもあった。

喉が渇いたらしい通行人A(※編集部注:通行人というか、取材に来ていた某メディアの方です)


■イベントの傾向

今回のワイヤレスジャパンは基礎技術の紹介やエンタープライズ向けのソリューションなどがほとんどで、一般ユーザーが興味のあるようなものはあまり多くなかった印象だ。今後の業界動向を知るにはいいが、新製品目当てで来たらガッカリしてしまったろう。僕は個人的には何より、プレスルームにコーヒーなどの用意がなかったのにガッカリしたが。

編集部注:取材後、ひと休憩のためプレスルームに向かう一条氏。
残念ながらお目当てのコーヒーがなく、うな垂れています……。
(右:プレスルームに入るところ。左:出たところ)


■あとがき

ちなみに、イベントが終わった後に、編集長の長田MAXとGoogle+のビデオチャット機能「ハングアウト」(※最近「ハングアウト」は単なるビデオチャット機能の名称から、テキストチャットなども含めた統合メッセージサービスの名称に変わったが、ここではビデオチャットについて語っている)で遊んでいたのだが、これが中々オモシロイ。僕や長田MAXは意外というか、これまでジックリとハングアウトを使ったことがほとんどなかった。Appleの「FaceTime」のように相手の登録とか面倒なことが必要なく使えるのもいい。「HTC J butterfly」とか、高画素なインナーカメラを搭載した機種の場合は、ハングアウトの画像もかなりキレイだ。スマートフォンのインナーカメラも200万画素が普通になるとビデオチャットも楽しそうだ。

取材後のひと休憩中にハングアウトで遊ぶ長田MAX。右手に持つは一条氏のiPhone 4S、左手はHTC J butterfly。AndroidとiPhone間でもGoogleのハングアウトは使える。

(記事:一条真人

【情報元、参考リンク】
ワイヤレスジャパン2013

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