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【CES取材レポート】 Qualcomm Snapdragon 800がUltra HDビデオを身近にする

ソニーが発表したスマートフォン「Xperia Z」のように、今やハイパフォーマンスなAndroid端末はクアッドコアCPUが普通になってきつつある。しかし、今後のスマートデバイスは何を目的にするのだろうか? 単純にパフォーマンスを上げていっても、今やスマートフォンの普通の用途(普通って何? という話は別として)には十分になりつつあるからだ。

Qualcommブース

スマートデバイスのプロセッサとしてはQualcomm(クアルコム)がメインストリームなわけだが、米ラスベガスで開催されたコンシューマ・エレクトロニクス・ショー「2013 International CES」のクアルコムブースで、近い将来にリリースされるSnapdragon 800のパフォーマンスを示すデモをいくつか見ることができた。

■Ultra HDビデオをデコード可能なSnapdragon 800

シアター的な環境でビデオとサウンドをデモするコーナーでは、Snapdragon 800を搭載したタブレットで、まずはUltra HD解像度の動画再生を見せてくれた。もはやフルHDを再生したぐらいでは誰も驚かない。やはり、Ultra HD解像度の再生ぐらいでないと、人は驚いてくれないのだろう。動画の圧縮フォーマットが何なのかが少し気になるところだが。

Ultra HDは日本でいうところの4K解像度(3,840×2,160ドット)で、フルHDの4倍の解像度を持っている。そのハイパーな負荷をタブレットでこなして見せたわけだ。これはいくつかの点で凄い。現在のタブレットで、4K解像度のディスプレイを持つものはない。もっとも解像度の高いタブレットは「Nexus 10」の2,560×1,600ドットに過ぎない。やはり、クアルコムはUltra HDテレビを接続して再生することを視野に入れているのだろう。

このSnapdragon 800の登場は、今年、2013年の後半になるという。そして、ソニーがUilra HD解像度のビデオ・オン・デマンド(VOD)を開始するのが今年の夏という話なので、今年の後半になるとUltra HDビデオの歯車の回転があがりそうだ。このチップをテレビに仕込めば、割りと安価にUltra HDデコード環境が実現できるだろう。

また、このチップはH.265のソフトデコードも可能にする。H.265は現在多くのVODに使われるH.264よりも圧縮率が高く、デコード処理も重くなるのだが、フルHDでも4Mbps程度のものであれば、ソフトデコードできるデモがクアルコムブースで行われていた。以前は、H.265は再生負荷が高すぎてソフトデコードは無理とか言われていたのだから、時代の進みは速いというのを実感する。

2画面再生デモ。H.265とH.264の再生デモ。

H.264映像のスペック。ビットレートは6Mbps。

H.265映像のスペック。ビットレートは4Mbps。
H.264の7割程度のビットレートで同等の映像クオリティを持っていることになる。


■サラウンド再生デモも強力

クアルコムブースのミニシアターでは、ヘッドフォンによるサラウンド再生のデモも行われた。このときに使われたサラウンド技術はDTSの「DTS HEADPHONE:X」だと思われる。デモ画面にもDTSの文字があり、DTSのブースでデモしていた「DTS HEADPHONE:X」のサラウンドサウンドデモそっくりだった。ヘッドフォンも同じゼンハウザーのものだった。

このDTS HEADPHONE:Xは、今回のCESで発表されたサラウンド技術であり、実に最大11.1チャンネルの音場を仮想的に再現するというもの。従来のサラウンド技術とは異なり、音が周囲から聞こえてくるような仮想感をユーザーが感じることができるというものだ。デモでも、ヘッドフォンをした場合とはずした場合で音を鳴らし音場感にあまり差がないことを確認した。仮想サラウンドとしてはかなりできがよく、音の方位が的確に再現されている。今までの仮想サラウンドの中ではベストの出来かも知れない。

このDTS HEADPHONE:Xが動作する条件としては、まずはサウンドデータがDTSが指定するサウンド形式である必要があり、さらに当然ながら、音を作り出すデバイス、ヘッドフォンがDTS HEADPHONE:Xに対応している必要がある。

ちなみに11.1チャンネルというのは音の位置を高い場所に設定したチャンネルが含まれたもので、それがない7.1チャンネルなどのサラウンドも可能だ。このあたりは音を作るデバイスのポテンシャルの問題となるだろう。DTSのブースのデモでは11.1チャンネルでデモが行われていたが、クアルコムのブースでは7.1チャンネルだったが、これは比較するためのリアル音響設備の問題もあるのだろう。

何にしても、これに対応したタブレットやスマホであれば、ヘッドフォン1つ持ち運ぶだけでサラウンドサウンドが楽しめるわけだ。ゲームやAV視聴にはかなりの威力を発揮しそうだ。

クアルコムブース内のミニシアター。

MCの人がギャーギャー騒ぐ(アメリカ的だね)なか、冷静にデモのためのタブレットをセットアップする人。

7.1チャンネルサラウンド再生のデモ。音の方向性が極めて明確なのが凄い。

シアターは大人気でかなり待たされたが、その間にアンケートをとったり、ピンバッジや水をくれたりしていた。プレスなら優先的に入れてくれたのを後で知ったが、文字通り、後の祭り。

DTSブースではよりマルチチャンネルな11.1チャンネルのデモが。7.1に高さの異なるスピーカが追加されているのがわかる。ヘッドフォンは同じゼンハウザーだ。


■クアルコム次世代プロセッサは何を目指すか?

クアルコムの次世代プロセッサSnapdragon 800は、スマートフォンやタブレットを単純に速く快適に動かすだけのことを目的にしているわけではなさそうだ。その先に何を求めるのか? といっても様々な選択肢があるが、クアルコムとしてはとりあえず、これらの高解像度映像デコードやサラウンドオーディオ処理のなかにユーザーメリットをアピールしたいようだ。これはタブレットでのビデオ視聴やゲームのプレイ環境を大きく変えていくことだろう。

Snapdragon 800搭載タブレットなどをテレビと接続して再生するのはもちろん、このプロセッサをテレビにインプリメントすれば、手軽にUltra HD(4K)ビデオをデコードするテレビを作ることができる。クアルコムはスマートデバイスに限らない戦略を持っているのではないだろうか? そんなことを想像させてくれる展示だった。

(記事:一条真人

【情報元、参考リンク】
Qualcomm

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