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【せう先生のスマホ講座】第56回:USBでもっと給電したい! 「USB Power Delivery」ってなに?

GAPSISをご覧の皆様、「せう」です。こんにちは。前回の記事「Androidスマホで増加傾向! 『USB Type-C』ってナニモノ?」で取り上げた「USB Type-C」端子って、本当に便利ですよね。端子の裏表を考えなくてもいいということは本当に気楽です。

<▲図:USB Power Deliveryの概略図(USB.orgより)>

前回、「USB Type-CはUSB 3.1規格と同時に策定された」という話をしましたが、実はUSB 3.1と同時に策定されたオプション規格がもうひとつあります。それが、今回解説する「USB Power Delivery(USB PD)」です。

■大容量の電流も流せるUSB PD(条件あり)

<▲図:USB PDによって電源端子(MagSafe端子)を撤廃した、編集長が買うであろう新型「MacBook Pro」>

USB規格には、規格ごとに流せる電流量の上限があります。例えば、USB 2.0は5V/500mA(2.5W)、オプション規格である「USB Battery Charging(USB BC)」に対応すると5V/1.5A(7.25W)の電流を流せます。USB 3.0(USB 3.1 Generation 1)では 5V/3A(15W)と、標準状態でもより大きな電流を流せるようになりました。

しかし、USB BCやUSB 3.0の規格をもってしても、フルスペックのPCや大容量バッテリーのスマホ・タブレットを充電するには電流面での物足りなさがあります。

そこで、USB PDは、電圧・電流の両面を従来よりも高くできるようにしています。電圧・電流のオプションは複数用意されていますが、最大で20V/5A(100W)の電流を流せるようになっています。一般的なノートPCでは「20V/3.25A(65W)」程度の定格となっていることを考えると、USB PDによってノートPCから専用の電源端子を撤廃できる可能性があるのです。

現に、上に例として挙げた新型のMacBook Proを始めとして、USB PDを採用して専用の電源端子を廃止したノートPC・タブレットがちらほら出てきています。

USB PDのさらなるメリットとして、「デイジーチェーン(数珠つなぎ)給電」にも対応している点が挙げられます。例えば、ACアダプター→パソコン→モニター→プリンター→…というように、ACアダプターや途中通過する機器の給電限界を超えなければ、1つの電源ソースから複数の機器へ電源を供給できるのです。機器間通信によって電源の「供給する側」「供給される側」のスワップ(入れ替え)もできます。


■USB PD利用には機器だけではなくケーブルの対応が必要

<▲図:USB PD対応のケーブルの例(画像はエレコムの「USB3-CC5P05NBK」)>

USB Type-Cと同様に、USB PDはUSB 2.0とUSB 3.1双方のオプション規格です。よって、USB 2.0機器、USB 3.1機器のどちらもUSB PDに対応させることができます。

しかし、USB PDは機器だけではなくケーブル側でも対応が必要となります。ケーブルにUSB PD対応用のチップが組み込まれていないと、USB PD対応機器同士の接続であってもUSB PDの機能が有効になりません(給電されないか、給電能力が著しく低下します)。

チップを組み込まなければいけないということと、ケーブル自体に流れる電流量が大きくなることから、USB PD対応ケーブルは一般的に通常のケーブルよりも割高です。PD対応抜きのUSB Type-Cケーブルがそうであったように、普及さえ進めば価格もこなれてくると思われますが、数カ月単位ではムリであると思われます。

USB PDには電源ケーブルと機器接続を兼用できるというメリットもありますが、その分だけ他のUSB端子も削減されてしまう傾向にあるため、拡張性にむしろ困難を来すという可能性があるというデメリットもあります。USB Type-C端子の普及が進めば、解決するのでしょうが、どうなることやら……。


記事執筆者プロフィール
せう
ブログ:せうの日記、Twitter:@shoinoue

静岡県三島市で産まれ、静岡県駿東郡長泉町で生まれ育ったアメリカ系日本人3世。見た目が日本人離れしている反動で、身の回りの道具は日本で開発されたものだらけである。ITmedia、andronaviを始めとするWeb媒体を中心に執筆活動を展開。自前のブログ「せうの日記」も宜しくお願いします。

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