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【一条真人的Androidライフ】第3回:Androidに襲いかかる「Surface」というビッグウェーブ

《Surfaceの不思議な成り立ち》

Microsoftの次期Windows OS、「Windows 8」のリリースが迫ってきたなか、同社から「Surface」というWindows 8搭載タブレットが6月に発表された。このSurfaceこそがWindows 8のひとつのキャラクターを表しているのは間違いのないことだと思う。

Microsoft Surface

Windows 8の特徴のひとつは、現行バージョンである「Windows 7」のような「デスクトップモード」と、スマートデバイスのようなアプリを動かす「メトロモード」の2つを持つことだ。デスクトップモードでは今までのようなWindowsアプリ(ソフトウェア)が動作する。このデスクトップモードには「Windows Vista」から搭載されていた「Aeroデスクトップ」機能がなくなり、より動作が軽くなる(Aeroってなんだったの?)。ちなみにWindows伝統の「スタート」ボタンもなくなる。

Windows 8は従来のWindows環境を軽量化したものに、スマートデバイス向けのメトロモードを追加したOSということになる。まあ、メトロモードはマウスでも使えるので、必ずしもスマートデバイスでしか使えないわけではないが、どちらかと言えばスマートデバイスの方が操作しやすいだろう。

また、Androidにおけるウィジェットのように、メトロのタイルの一部は自動的に情報の更新/表示が可能なので、アプリをいちいち起動しなくても最新の情報が確認できるのが機能的だ。これもスマートデバイス的な機能ではある。

さて、AppleがMac OSを搭載した「Mac」とiOSを搭載した「iPhone」や「iPad」を別々の製品にしているのは、ある程度常識的な問題ではある。なぜなら、マウス(もしくはトラックパッド)とキーボードで操作する製品と、タッチ操作のみの製品という、異なるヒューマンインターフェースを持つ製品なのだから当然とも言える。

これに対して、Microsoftのタブレット Surfaceはタブレット本体と、キーボードが搭載されたカバー「Touch Cover」を組み合わせるという手段で、両方のヒューマンインターフェースを持たせようとしている。

なぜ、この二つを組み合わせるか? というと答えは簡単で、Microsoftはリスクを犯したくない会社だからだろう。

言うまでもなく、MicrosoftはデスクトップOSでは世界ナンバーワンのシェアを持っていても、タブレットなどのスマートデバイスでは大きな実績はない。「でも、抱き合わせちゃえば、買わざるを得ないじゃない!」というファミコンの初期を思わせる壮大な抱き合わせ戦略で生まれたのがWindows 8なのだろう。

そして、それを体現するためのハードウェアが、タブレットにもPCにもなるSurfaceということと考えられる。

Surface本体の背面にはキックスタンドもある


≪マイクロソフトは強力なハードウェアメーカー≫

さて、Surfaceのポイントは、あくまで基本的にはタブレットであり、必要に応じて「キーボードも使っちゃいなよYouたち」というものなので、Windows 8世代になっても真剣なビジネスユーザーはSurfaceではなく、普通のデスクトップパソコンやノートパソコン(ウル虎ブック? ならぬUltrabookなど)を買うことになることだろう。UltrabookはWindows 8世代では強力なベストセラーとなるはずだ。ちなみに、この原稿はASUSのUltrabook「ZENBOOK」で書いている。

とはいえ、タブレットであるSurfaceを「Microsoft」ブランドで売ることには大きな意味がある。

現在のAndroidは同じOSを搭載していても、製品ごとにユーザーフィールが大きく異る。AppleのiPadはこのあたりで大きくリードしている商品であり、Windows 8がタブレットとして高い評価を得たければ、ハイレベルなメーカーと手を組んでチューニングするか、自分自身のブランドでハイレベルにチューンしたハードウェアを作るしかない。そして、Microsoftが選択したのは後者だ。これはまた、絶対に負けられないというMicrosoftの思いをも表している。

正直、Microsoftが自社のブランドでタブレットを出してくると予想できた人は少ないだろう。僕もまったく予想していなかった。それだけMicrosoftはここで勝たなければ後がないということを実感しているのだろう。

そして、実はMicrosoftというのはハードウェアメーカーとしてもなかなかに優れている。

僕はMicrosoftのナチュラルキーボードを10年ぐらい愛用しているし、マウスもロジクールのライバル的な商品となるぐらい素晴らしい。Surfaceの成功はTouch Coverの出来に大きく左右されるとも思うが、この面でMicrosoftがしくじる可能性は低そうだ。


≪Androidタブレット最大の危機か?≫

SurfaceによってMicrosoftがタブレットのセグメントで大きなウェーブとなるのは間違いないと思う。そして、同じくメトロインターフェースを採用したWindows Phone 8も躍進することになるだろう。

Windows 8の登場から2~3年でSurface(及び他社のWindows 8タブレット)やWindows Phoneはスマートデバイスのなかで大きなシェアを持つようになる可能性があると思う。

特にタブレットでは必ずしも成功していないAndroidにとって、Surfaceは大きな危機のファーストウェーブとなる可能性があるかもしれない。



記事執筆者プロフィール
一条真人
ITジャーナリスト
Twitter:@ichijomasahjito、Facebook:masahito.ichijo
ブログ:一条真人メモ

クラウドサービスからスマートデバイス、デジタルAVまで、デジタル関連のアイテムが大好き。「ハッカー」(日本文芸社)、「PCプラスワン」(笠倉出版)などパソコン雑誌の編集長を経て、小説なども出版して現在にいたっています。PC、IT関連の本は50冊以上書かせてもらいました。スマートフォンは初代Xperia(あまりに美しいデザイン!)、iPhoneなど数機種使っています。

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