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【河野謙三のガジェット・ゴーグル】 大切なことはすべてFriendFeedが教えてくれた

私のブログをご覧になったことのある方はお気づきも知れませんが、ブログを更新した通知を今までFriendFeedを使ってTwitterで告知していました。ところが、最近になってfeedburnerというGoogleのサービスの方が何かと便利なため、こちらを使って、ブログのアップデート告知を流すようにしたのです。

設定自体はすぐに完了して、「こんにちはfeedburner、さようならFriendFeed」となった訳なのですが、今まで2年ほど使用してきた(しかも無料で)FriendFeedとは一体何だったのか、そんな疑問が自然とわいてきました。

今回の記事は、少しガジェットとは違うのですが、普段は気づくことのあまり無い、インターネットのコミュニケーションの変化の推移をFriendFeedという「ゴーグル」を通じて見ることで面白い発見がありましたので、ここにコラムとして書きたいと思います。

FriendFeedが必要とされたわけ

FriendFeedは2007年10月にローンチされた、さまざまウェブサービスをアグリゲート(集約)するライフストリーミング・サービスです。その設立者と開発者の多くに元グーグル社員(Bret Taylor氏、JimNorris氏、Paul Buchheit氏、Sanjeev Singh氏)が入っていた事から、スタートアップ当初から注目を集めていました。


FriendFeedがサービスインした2007年よりも前、たった3年前のことですが、私たちは自分が興味のあるブログや、Webページなどのコンテンツを、検索によって探していました。検索して、面白そうなサイトをブックマークに登録する。それが2007年よりも前の我々のインターネットスタイルでした。

この頃ちょうど、オープンすぎるインターネットにクローズドというゆるい制約を加え、招待でしか入会することの出来ないサービス、mixiが国内では爆発的な人気を博すこととなりますが、クローズドなソーシャルネットワークの話は、またの機会にしましょう。


PullからPushへ

FriendFeedのサービス内容はその名の通りです。friend(友達)、feed(流す)の言葉が示すように、自分が面白いと思ってフォローしている人がblogやWebサイト、Youtubeなどのコンテンツをアップロードしたら自動的にその内容が「アップデートがあったよ」とユーザーに通知してくれるサービスです。

FriendFeedはこの機能によって、今までのインターネットのあり方を変化させました。つまり、インターネットの歴史が大きく変わるきっかけを作ったのです。


今までコンテンツの閲覧者は、検索によって自分が面白いと思うものを探し出し、それをブックマークに登録する。そしてそのブックマークを開くことによって、当該コンテンツがアップデートされているかどうかを知り得ていました。

FriendFeedの登場により、そんなことをしなくても、注目したい「人物」をフォローしさえすれば、あとはFriendFeedを開いておくだけで、その人物だけではなく、その人物と繋がっている人たちの更新情報も一度に知ることができるようになりました。

情報のプッシュ・メソッドと、つながる、と言うことが初めて面白いと認知された瞬間でした。でもこの3年前のサービス、何かに似ていますよね。そう、Twitterです。FriendFeedはTwitterの登場により、数奇な運命をたどります。


求められるのは機能か手軽さか?

FriendFeedが英語圏でサービスを開始したその約1年後、2008年12月に、日本語を含む複数の言語サポートが発表されました。既に英語環境で使用していた人たちも、FriendFeedのメニューや設定内容が全て日本語化されることで、ごく限られたマイノリティだけではなく、一般のユーザーにも使いやすいサービスになりました。

ところが、そんな改良にも関わらず、FriendFeedのユーザー数は伸び悩みます。下のグラフは、TwitterとFriendFeedのユーザー数の推移を示したものです (ZDNetの記事より抜粋)。2008年に大きくユーザー数を伸ばしているのは、FriendFeedではなく、Twitterのほうでした。

Source: ZDNet.

TwitterとFriendFeedは何が違うのかを見ていきましょう。

FriendFeedでは、主にコンテンツのアップデートに着目して、そこにコメント機能を付け加えた、いわば「つぶやき」はおまけのものでした。逆に、Twitterはつぶやく事しか機能が無く、コンテンツのアップデート情報を自動的に収集し、urlを短縮してユーザーに回覧する、と言ったFriendFeedが備えている機能を全く持ち合わせていません。

普通に考えれば、多機能で、使い勝手の良いFriendFeedが、ブロガーを中心としたインターネットユーザーに歓迎されるはずです。がしかし、結果は全く逆のものでした。


これはTwitterの機能のシンプルさ故に、サードパーティーがTwitterと連携する機能を開発しやすかったことが、Twitterの幸運を呼び込むきっかけにも繋がっています。かつそれらの機能やサービスとTwitterを連携することが可能な、xAuthやoAuthといった技術に代表される認証方式が確立されたことも追い風となりました。

またたくまに各種オンラインブックマークサービスのRSSを収集し、Twitterに流すサービスや、WordPressのようなブログをアップデートした際に自動的にそのことをTwitterに流すプラグインが開発されていきました。

このことは、インターネットユーザーが機能よりも、手軽さを重視したことに他なりません。今までは、多機能こそが命と考えられていたサービスは機能性よりも手軽さ、そして何よりも、コメント(つぶやき)により、人と人とが繋がることの方がより重要、と言う大きな変化を求められたのでした。


繋がることの大切さ

これは私の持論なのですが、海外に比べ、日本はその国民性が、よりTwitterに向いていると思うのです。余り長くダラダラと議論を好まず、ちょこちょことしたつぶやきを好むことや、有名人や、友人と浅く広くつきあう関係、そしてその繋がっている人たちが何をしているのか、日常の一部を垣間見る事の出来る関係、そうした全てがTwitterに適しているのではないかと考えます。

ここ数十年に大ヒットしたアニメを例にたとえます。

ニュータイプという人類の革新によって、たとえ真空の宇宙でもお互いの存在を主張し、それに応じることの出来た人々。アムロ・レイとシャア・アズナブルを中心とした戦いはたとえ敵同士であっても、ララア・スンという共通の人物を通じて、お互いをわかり合おうと努力します。

国連直属の非公開組織である特務機関NERV(ネルフ)。汎用人型決戦兵器 人造人間エヴァンゲリオン(EVA) 。そのエヴァに乗ることになった、他人との接触を好まない内向的な少年「碇シンジ」。父親である碇ゲンドウから世界の命運を託され、命をかけて戦う中で、綾波レイ、アスカといったパイロットと、ミサト、加持やトウジ、ケンスケといったクラスメイトと、そして最後はエヴァンゲリオンそのものとに心を開き、世界と繋がろうとします。

7人の魔術師(マスター)が7騎の使い魔(サーヴァント)と契約し、聖杯を巡る戦争に臨むストーリーで昨年映画化されたFate/stay night。魔術を習うもその才能を見いだせず、半人前の魔術師として生きていた主人公・衛宮士郎は、偶然にもセイバーと契約することで聖杯戦争に巻き込まれていきます。そしてその戦争の中で、衛宮士郎は自らの魂や、信じるものと繋がることの大切さを見いだしていきます。


緩いつながりから堅いつながりへ

今、世界中では実名を基礎としたソーシャルネットワークサービスのFacebookが猛威をふるっています。半年ほど前に、FacebookのトラフィックがGoogleを超えたというニュースを耳にしたことのある人も多いでしょう。

そして皮肉にも、2009年8月11日、FriendFeedはFacebookにその特徴であったリアルタイム技術を明け渡すことになります。FriendFeedの全社員12人はFacebookに移籍し、4人の共同創設者はFacebookの技術・製作チームの幹部になりました。

Friends (C) Warner Bros. Entertainment Inc.

FriendFeedの技術は、今ではFacebookの至る所で活用されていますが、最近のFacebookの勢いはとどまるところを知らないようです。

今まではインターネットという匿名性の非常に高い世界で、ユーザーが面白いという理由だけで緩く繋がることが大切とされていました。ところが、Facebookの登場により、面白い情報は実際に会ったことのある、実名を知っている友人から教えてもらった方がよい、と言う流れに変わってきています。なぜなら繋がることの大切さに我々は気づいてしまったからです。

日本には村八分という古来より日本民族の深層心理に語りかけてくる考え方があります。一方で、2ちゃんねるに代表される、仮想現実のインターネットの世界だからこそ、匿名性を重視したゆるいつながりが重要とされる世界もあります。

日本でのFacebookサービスは実名が基本となっていることから、加入する障壁が高いのではないかと、一部のメディアでは議論の対象となっていますが、はたして、我々日本文化の選択する道はどちらなのでしょうか。ゆるいつながりか、堅いつながりか。おそらく後半年後には、その結論は出ているでしょう。そのときはまた、このコラムの続きを書きたいと思います。


記事執筆者プロフィール
河野謙三
NSP-mono ファウンダー、代表
ブログ:NSP-mono blog、Twitter:@kenzokono

1996年から約7年間、アメリカに在住。シスコシステムズのエンジニアとしてインターネット黎明期に多くのサービス立ち上げに携わる。日本へ帰国後はNTTコミュニケーションズを経て現在は金融に勤務しながらITを中心としたビジネスのアドバイザリー活動を続ける。

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