<▲図:Paperlike HD-FT。左下に操作ボタンが集まっている> |
10日に販売代理店のSKTが発行したプレスリリースにはサッと目を通していましたが、よく読みもせずにスルーしていましたが、昨日ChromeでGoogleが何気なく表示してくれた「PC Watch」における山口真弘氏執筆のこちらの記事(ついに実用レベルのE Inkディスプレイが登場。書き仕事に魅力の13.3型「Paperlike HD-FT」)を読んで感激しました。
GAPSISでも時々、E-Inkディスプレイ搭載製品のプレス発表などを取り上げています。Androidに全く関係がなくとも、です。
それは私自身が長年頭痛に悩まされていて、できれば可能な限りの仕事を電子ペーパーディスプレイで行いたい、という願いをずっと抱いているからです。その考えが生じた切っ掛けは昔、ソニーの電子書籍リーダー端末「Sony Reader PRS-505」を米国のB&Nで直輸入で購入して感動したことです。当時、2chや海外の掲示板を見ていても、電子書籍の自炊派の多くがSony Readerを使っていたと思います。
今ではAmazonの「Kindle」シリーズがかなり普及していますし、楽天傘下の「Kobo」の製品も見かけると思うので、E-Inkディスプレイの存在と表示形式をご存知の方も増えているはずです。その一方で、全く知らないという方も依然として多いと思います。
そういう方のために簡単に説明すると、E-Inkディスプレイの表示は、紙と基本的に同じです。電子的に書き換え(表示切替)が可能なインクを使ったディスプレイと思って頂いて構わないでしょう。
<▲図:E-Inkと液晶パネルの表示形式の違いを示すイメージ例> |
当たり前ですが紙は電力不要ですよね。紙の上に色のついたペン、鉛筆、ボールペンなどでインク、塗料などを付着させて文字やイラストを表示させます。当然発光もしません。外光によって初めて視認できます。外光がない、すなわち暗い環境では見えません。
ですが、発光しないので目の疲れは液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどと比べて圧倒的に少ないはずです。
繰り返しますが、E-Inkディスプレイは紙と同じく発光しません。紙と同じです。外光がある環境で初めて視認できます。Sony Reader PRS-505の頃と違い、今では暗い部屋などでも視認できるように、フロントライト(ディスプレイの前面にフラットに当たるような専用の照明)を搭載している製品もありますが、液晶ディスプレイのバックライトとは違い、外から照明を当てるわけで、暗い場所ですら目の負担は少ないです。
<▲図:一応フロントライトも搭載されているので、暗い場所での利用も可能> |
ところが、E-Inkディスプレイには普及に向けて大きな課題があります。
画面の書き換えにとても時間がかかることです。今ではかなり進化して、ページ切替をパパっとできるようになってきましたし、もう一つの課題である残像(ページ切替時に前ページの画像が残像のように残ることがある)も減り、残像を一旦クリアする処理も速くなりました。
でも、電子書籍なら問題なくとも、PCで本格的にモニターとして使うとなると不十分です。
PCのディスプレイは通常60Hzのリフレッシュレートで表示されています。4KモニターにHDMI出力して使っている方は少し前のPCだと30Hz出力かもしれませんが、ともかくPCでまともに使うなら、少なくとも1秒間に20回くらいの表示切替ができないとストレスが溜まりそうです。
ですが、そんな夢のようなモニターは長年待っても出て来ませんでした。
ところが、ついに出たようです。前述のPC Watchのレビュー記事を読んで本当に感激しました。凄いです!
中国メーカーの「DASUNG」(ダサング)が手掛ける「Paperlike HD-FT」という製品です。
13.3インチで解像度が2,200 x 1,650ドットのE-Inkディスプレイを搭載し、HDMI入力での映像出力が可能となっています。Windows、Mac、Linux、Android、iOS、ほとんど何でも繋がるようで、ソフトのインストールも不要。HDMIケーブルを繋ぐだけで使えます。そして、テキスト入力、マウスカーソル、Webサイトのスクロールなど、PCの軽度の用途において、まともな速度で表示可能となっています。
<▲図:右のSurfaceから左のPaperlike HD-FTに外部出力した状態でのテキスト入力レスポンスの実例> |
日本での販売代理店はSKTが務め、すでに発売されていますが、そのSKTのプレスリリースにもあるように、基本的にはサブモニターとしての使用を想定しているようです。確かにそうですよね。通常の基本的なウィンドウはメインモニターに映し、テキスト入力、プログラムのコーディング、Officeの文書作成など、モノクロ表示でも構わないものは拡張モニターとしてのPaperlike HD-FTに映せばベストでしょう。
表示モードの切り替え、コントラスト調整などは全て本体に搭載された物理ボタンで行うため、PCやスマートフォン、タブレットなどに別途ソフトウェアをインストールする必要もない、という点も楽でいいですね。
また、PC Watchの記事及びYouTubeで公開されている動画を見る限り、タッチパネルでの操作はあまり実用的ではなさそうです。今突然タッチパネルと言いましたが、本製品は一応タッチ操作も可能となっています。テキスト選択したり、ウィンドウを動かしたり、スクロールしたりといったタッチ操作ができます。
ただ、単にWebサイトを長時間見るとか、電子書籍をPCで見る分には、タッチ操作のレスポンスが多少悪かろうと構いませんが、本格的にマウス代わり、タッチパッド代わりにするのは厳しいでしょう。また、タッチ操作に関してはWindowsとLinuxだけに対応しているようです。Android、iOSでもタッチ操作可能なら電子書籍の長時間閲覧などに便利だろうと思いましたが、そういう用途なら電子書籍リーダー端末がありますからね。
本体は760gと軽く、一応自立できるように簡易的なスタンドがついているようですが、PC Watchでも言及されているように見るからに弱そうなので、うっかり何度も倒してしまいそうです。背面に「VESA」規格(PC用モニターなどが採用する取り付けマウントのための規格)に準拠した、75 x 75mm間隔のネジ穴が設けられているので、市販のVESA準拠のスタンドなどを購入する方がよさそうです。逆に好みのスタンドを買えばいい話なので、使えない下手なスタンドがついて値段が上がるよりも良いかもしれません。
Paperlike HD-FTへの映像入力端子はminiHDMI端子です。
HDMI入力なので、基本的に実質的にほぼ何でも繋げられそうです。
<▲図:Android、iPhone、iPadの映像出力例> |
E-Inkの消費電力は非常に少ないため、電源供給はUSBとなっています。5V/2Aなので、ひと昔前のスマホ用USB-ACアダプタも流用できそうです。
一応本体パッケージにはminiHDMI to HDMI&USBというケーブルが同梱されるようです。miniHDMIコネクタをPaperlike HD-FTに繋げて、もう一方はHDMIとUSBに二又で分かれ、HDMIをPC等の映像出力機器に、USBを電源供給元の機器に繋ぐという形になるようです。ただ、タッチ操作の伝送信号をUSB経由でやり取りするとのことなので、タッチ操作を使いたい場合にはPCのUSBポートに接続します。
ですが、タッチ操作に対応していない機器を使う場合や、Windowsでもタッチ操作不要なら、市販のケーブルでも問題なさそうですね。市販のminiHDMIケーブルと、USBケーブル&ACアダプタの組み合わせで大丈夫そうに見えます(推測です)。
販売店はAmazon.co.jpとYahoo!ショッピングです。Amazonでの実売価格は現時点で161,784円(税込)です。
元々はクラウドファンディング「INDIEGOGO」で資金調達及び先行販売が行われていたようで、その時には通常価格139,994円、先行販売による23%オフで107,662円なので、製品自体はSKTの販売価格よりも安価ですが、国内販売におけるアフターサポートを始めとするサービス及びリスクを考慮すると、多少マージンを乗せないと商売にならないことは理解できるので、妥当な価格設定だと思います。
とはいえ、とはいえですよ、さすがに16万円は高く、非常に悩んでいるところです。約2か月前にデスクトップPCとモニターが壊れ、新しいPCと4Kモニターを買ったばかりです。加えて、ノートPCも調子が悪く、買い替えたばかりです……。予定外の出費で、懐はシベリアの極寒のように寒々としていますので、おそらく私自身はしばらく買えません……。しかし、記事で紹介することで1台でも多く売れれば、メーカーのDASUNGも、代理店のSKTも利益になるわけで、Paperlikeシリーズ存続及び新製品開発継続に繋がると思います。ひいては多少の値下げも可能になるかもしれませんし、最終的に巡り巡って私も将来的に買いやすくなるかもしれません。そうした思いもあって、ヒットを祈願しています。
偏頭痛持ちの方は私同様、頭痛薬を手放せないと思います。もちろん偏頭痛の原因はモニターだけではないとは思いますが、大きな要因の一つだという点も確かでしょう。同じように頭痛に悩んでいる方、頭痛はなくとも目の疲れに悩んでいる方にはオススメです!
Sony Readerを代々購入してきたファンとしては、本音を言えば、こうした製品はソニーに出して欲しかったですが、ニッチな市場ですし、今はとにかく作ってくれたメーカーに感謝です。近年は半ば諦めて、それほど熱心にE-Ink市場を追っていませんでしたが、今回非常に感激しました。
PC Watchの記事ではとても細かくレビューされていますので、ぜひチェックしてみて下さい。ずっと良く知ることができると思います。
また、SKTの製品ページも合わせてチェックすることをお勧めします。
<▲図:主なスペック表。Paperlikeの新製品ラインナップは4機種だが、SKTが国内販売するのは現時点では、最上位モデルのPaperlike HD-FTのみ> |
下に掲載したのはAmazonでの商品リンクです。
【情報元、参考リンク】
・PC Watch/ついに実用レベルのE Inkディスプレイが登場。書き仕事に魅力の13.3型「Paperlike HD-FT」
・SKT/Paperlike HD-FT製品ページ
・SKT/Paperlike HD-FTについてのプレスリリース
・INDIEGOGO/Paperlikeプロジェクトページ