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【一条真人的Androidライフ】第33回:Firefox OSを迎撃する「キットカット」(Android 4.4)

しばらくの間、Android OSの進化の内容にはピンと来ないところがあったが、最新バージョンのAndroid 4.4「KitKat(キットカット)」は僕のなかでインパクトが大きかった。Android 4.4のリリースとともに、それを搭載したスマートフォンの「Nexus 5」が発表され、しかも日本でもGoogle Playで販売開始されたため、多くの人々がすでにそれを手にしていることと思う。

Android 4.4 KitKatを搭載したNexus 5

当然、様々な機能が追加されているわけだが、このAndroid 4.4の凄いところは、動作に必要なリソースが軽くなっていることにある。この数年、というか誕生してから今までのAndroid OSはひたすら機能拡張を進め、ブクブクとその必要リソースを拡大してきた。そのため、動作にはより多くのメモリを必要とし、現在の最新機種では2GB程度のメモリを搭載するのが普通になってきている。

メモリ2GBが多いか少ないかは別として、OSが2GBのメモリがないと快適に動作しないとすれば、それは問題だ。実質的に最新のハイエンド端末しか実用性を持たなくなってしまうからだ。

しかし、現実にAndroid端末はここ数年、ハイエンド端末しか実用的に使いにくいというような状況の中で進化してきた。この状況が緩和されたのは昨年末というか、今年に入ったあたりからだ。

多くの端末がようやく最速レベルのCPUを搭載できるようになったわけだが、その1つの問題はCPUを製造しているQualcommの供給体制に問題があったと言える。実際、某端末メーカーの人に聞いたところでは、昨年までは高速CPUを仕入れることができなかったという。

以前はハイエンドCPUを搭載することで人気があったサムスン電子の「GALAXY」シリーズだが、ほぼ同等レベルのCPUを多くの機種(日本製の端末は今やミドルクラスでもハイエンドCPUを搭載している)が搭載するようになったことで個性がなくなり、その人気が急速に低下したのは記憶に新しい。

話を戻して、ともかくAndroid OSが必要リソースを膨らませ続けたことは大きな問題だ。日本国内の端末はハイスペックなので大きな問題ではないかもしれないが、不景気なスペインやらインドやら中国やらにおけるローエンド端末はハードウェアのスペックが強力ではないことが多いため、最新のAndroid OSを搭載することが難しくなっていた。

このような背景から、より低いリソースで動作する、より古いバージョンのAndroid OSを搭載する機種が未だに世界に存在し続けていたわけだ。そして、そのような中、Firefox OSなどは、より少ないリソースで動作することをアピールし、シェアを広げようとしていた。

Appleの「iPhone」のようにソフトウェアとハードウェアを一社が作っているわけではないため、Androidではハードウェアのスペックを統一してしまうことができない。このままではローエンド端末は古いバージョンのOSを搭載し続けたり、新しいプラットフォームであるFirefox OSなどにシェアを取られてしまうという危険性があったわけだ。ちなみに2013年に最初にスペインでリリースされたFirefox OS搭載機が以下の写真のもので、搭載メモリは片方が512MB、もう一方が256MBだ。

なお、Firefox OS搭載機がなぜこんなロースペックなのかというと、ヨーロッパでもスペインなどは不景気で、高価な端末などは多くの市民には手が出にくいからだ。

Firefox OS搭載スマートフォン



“Android OSのバージョンによる分断化を止め、そしてローエンド端末市場のシェアを狙う新OSに対向する”

そのために、最小512MBのメモリでも快適に動作するという、驚異的な提案をしてきたのが今回のAndroid 4.4 KitKatの持つ大きなインパクトだ。

512MBのメモリというのは、Androidのブレークのきっかけにもなった、2010年のNexus Oneのメモリ容量であり、その後の端末はほぼ512MB以上のメモリを搭載するようになった。

古いAndroid端末全てでキットカットが動作するようなことはメーカーもサポートし切れないと思うが、わりと最近のAndroid端末は4.4に積極的に対応することになるだろう。

そして、今後、新興国向けの低スペック端末でもAndroid 4.4を搭載した端末が増えることだろう。世界中のAndroid端末のOSのバージョンは一気に引き上げられることになるに違いない。僕がキットカットが大きなインパクトを持っているというのは、そういうことだ。


記事執筆者プロフィール
一条真人
ITジャーナリスト
Twitter:@ichijomasahjito、Facebook:masahito.ichijo
ブログ:一条真人メモ

クラウドサービスからスマートデバイス、デジタルAVまで、デジタル関連のアイテムが大好き。「ハッカー」(日本文芸社)、「PCプラスワン」(笠倉出版)などパソコン雑誌の編集長を経て、小説なども出版して現在にいたっています。PC、IT関連の本は50冊以上書かせてもらいました。スマートフォンは初代Xperia(あまりに美しいデザイン!)、iPhoneなど数機種使っています。

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