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スティーブ・ジョブズ、AppleがFlashを採用しないわけを説明。公開書簡紹介

米AppleのCEO、スティーブ・ジョブズ氏は同社がiPhoneからAdobeのFlashを締め出した理由を29日、公開書簡の形で明らかにした。公開された書簡ではFlashを採用できない理由を6つの視点から述べている。それは「オープン性」「フルウェブ体験」「セキュリティ、パフォーマンス、信頼性」「バッテリーの駆動時間」「タッチ操作」「最も重要な理由」だ。

書簡の内容は実に淡々と率直に書かれており、Appleが今後もFlashを採用する気がないことがよくわかるものになっている。また、ジョブズ氏の記述は非常に理解しやすく、納得できる箇所も多い。これまでAppleを批判してきた声も一部は沈静化するのではないか、と考えさせられるほどだ。一方で新たな批判を買いそうな箇所もある。いずれにしても、この書簡は非常に興味深い内容になっている。

公開書簡の原文はこちらのサイトからご覧になれる。タイトルは「Thoughts on Flash」だ。
http://www.apple.com/hotnews/thoughts-on-flash/

以下、概要をお伝えしよう。

【1. オープン性】

Adobeは我々が下した決断をビジネス上の理由に基づくものだと考えているようだが、実際には違う。これは技術的な理由によるものだ。彼らは我々が閉じたシステムを採用し、Flashこそがオープンだと主張しているが、それは逆だ。Flashは100%Adobeの管理下にあるものだ。iPhone OSももちろんそういう部分はあるが、ウェブに関係する全ての標準はオープンであるべきだと考えている。Flashは将来的な機能も価格もAdobeの管理下にあり、彼らが決定する。クローズドだ。そのため、我々はオープンな規格であるHTML5、CSS、JavaScriptに対応してきた。今ではAndroid、Palmでも採用されているデファクトスタンダードなウェブエンジン、webkitはAppleが開発したオープンなものだ。


【2. フルウェブ体験】

Adobeはウェブ上の動画の75%がFlashベースであり、Appleのモバイル端末ではそれが利用できないと主張している。しかし、多くの動画が現在ではH.264でも提供されているのが実情だ。iPhone、iPod、iPadでそれらの動画が利用できると言う点に彼らは触れていない。ウェブ全体の動画の40%を占めるYouTubeもそうだし、Netflix、Facebookなども同様だ。iPhone OSで視聴できない動画は実際にはそうないはずだ。また、FlashゲームはiPhone OSで利用できないが、App Storeには5万本を超える数のゲーム・エンターテインメントタイトルが揃っていることを忘れてはならない。それらの多くは無料だ。


【3. セキュリティ、パフォーマンス、信頼性】

我々はMacのクラッシュ原因の第1位にFlashがあることを知っている。この問題にはAdobeと共に取り組んできたが、ここ数年解決されていない。Flashを導入することによってiPhone、iPod、iPadの信頼性とセキュリティを低下させるわけにはいかない。さらに、Flashはモバイル端末でのパフォーマンスが決して良いわけではない。AdobeはFlash 10.1で対応する予定としているが、新バージョンでもパフォーマンス・レベルが向上していない可能性もある。Adobeは2009年始めにFlashがスマートフォンに搭載されると発表した。しかし、彼らは2009年後半、2010年前半と延期を繰り返した。今では2010年後半だという。もちろんいずれリリースされるのだろうが、私はじっと待ち続けなくてよかったと思っている。それにFlashのパフォーマンスがどの程度なのかは現時点では誰にもわからない」


【4. バッテリー駆動時間】

iPhone OSを搭載した端末はYouTubeやVimeoなどが採用する先進技術H.264に対応している。これらの動画はハードウェア・デコーディングによって低消費電力で再生することができる。ところが、Flashも最近になってからH.264に対応し始めたが、古い資産の多くが以前のデコーダを要求している。これらのソフトウェアベースのデコーディングではハードウェア・デコーディングに比べて約2倍の消費電力になってしまう。例えば、iPhoneではH.264ならば最大で10時間の動画再生ができるが、ソフトウェア・デコーディングでは5時間も保たないことになってしまう。


【5. タッチ操作】

Flashはマウス操作全盛時代に作り上げられた技術であり、タッチ操作には適していない。多くのFlashコンテンツではマウスオーバーが利用されているが、そもそもタッチ操作にはこの概念がない。タッチ操作の端末がFlashに対応したとしても、コンテンツを作る側もそれに対応した処置を採らなければならないことになる。どちらにしてもFlashコンテンツを書き換えなければならないのならば、いっそHTML5、CSS、JavaScriptにすべきだろう。


【6. 最も重要な理由】

我々は過去の経験から、プラットフォームとデベロッパーの間にソフトウェアのサードパーティ・レイヤーを介在させた場合、最終的に一般水準に満たないアプリケーションが作成され、プラットフォームの拡張と発展が妨害されることを知っている。サードパーティのレイヤーにデベロッパーの開発が依存することになった場合、プラットフォームが提供する新機能、拡張機能の採用が阻害されることになりかねない。それはサードパーティのクロスプラットフォームツールがそれに対応するまでデベロッパーは待たなければならないからだ。これではデベロッパーは実質的に最小限の機能しか利用できないことになってしまう。Appleは、先進的なプラットフォームを開発者に提供することで優れたアプリケーションを開発してもらいたいと考えている。どのような機能が使えるかを第三者に決定させるわけにはいかないのだ。


【結論】

FlashはPC、マウス時代の技術だ。低消費電力、タッチ操作、オープンウェブ標準といったモバイル端末時代には対応できていない。多くのメディア企業がApple製品に対してコンテンツを提供し、App Storeには20万の素晴らしいアプリが揃っていることが、Flashがすでに必要とされていないことの証明になっている。Adobeは過去からの脱却を図り前に進むAppleの批判をするのはやめて、将来に向けて優れたHTML5用のツールを開発することに力を入れるべきだと思う。

情報元:Thoughts on Flash.

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