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【せう先生のスマホ講座】第10回:ウェアラブル機器にも欠かせないかも。「Bluetooth 4.0」って今までのBluetoothと何が違う?

GAPSISをご覧の皆さん、「せう」です。こんにちは。最近、また右肩が痛みます……orz もう若くはないのかもしれません。

先日購入したAndroid Wear「SmartWatch 3」

それはさておき、先日、正式な発売日前にソニーモバイルコミュニケーションズの「SmartWatch 3」を買いました。その辺の顛末は、筆者のブログエントリーを見ていただくとして、初めてのAndroid Wearですよ。胸が高鳴ります。このSmartWatch 3を含め、Android Wearは、ほぼ例外なく「Bluetooth 4.0」以上を必要としています。

どうやら「Bluetooth 4.0」が必須らしい(※クリックして拡大)

たとえスマートフォン・タブレット側のOS要件(Android 4.3以上)を満たしていたとしても、Bluetooth 4.0以上に対応していない場合はAndroid Wearが使えないのです。「え、Bluetoothって『下位互換性』があるんじゃないの?」とお思いの方。実は、Bluetooth 4.0は今までのBluetoothとの下位互換性が全くありません。その代わりに得たものもあります。

ちょっと前置きが長くなりましたが、今回のスマホ講座では、そんなBluetooth 4.0について、簡単に、一部マニアックに解説します。


■Bluetooth 4.0は元々「Bluetooth」にあらず

Bluetooth 4.0は元々「Wibree」と呼ばれていたノキアの規格

Bluetooth 4.0は、元々フィンランドのノキアが開発を進め、2006年に提唱した「Wibree」(ワイブリー)という規格です。Wibreeでは、Bluetoothや無線LANと同じく、2.4GHz帯の電波を使って機器同士で通信するのですが、電波の変調方式を改め、通信速度を抑える(最大1Mbps)ことで大幅な省電力化を実現しました。


■Bluetooth 4.0=Bluetooth Low Energy(BLE)=Bluetooth Smart

「Bluetooth Smart」ロゴ(左)と、「Bluetooth Smart Ready」ロゴ(右)

2010年、ノキアも参加するBluetooth規格策定機関「Bluetooth Special Interest Group」(Bluetooth SIG)は、Wibreeを「Bluetooth 4.0」としてBluetooth規格の一部とすることにしました。その省電力性から、「Bluetooth Low Energy」という別名も付けられました。

このように、Bluetooth 4.0は元々“外”にあった規格であったため、従来のBluetooth規格とは全く互換性を持っていません。ただし、従来規格と両対応の機器を作ることは技術的には困難ではなく、ユーザーの利便性確保のために両対応の機器も登場することが予想されました。そこで、Bluetooth SIGはBluetooth 4.0規格にのみ対応する機器に「Bluetooth Smart」というロゴを、従来規格とBluetooth 4.0規格の両対応機器に「Bluetooth Smart Ready」というロゴを付与してユーザーに周知をはかることにしました。

まとめると、「Bluetooth 4.0」、「Bluetooth Low Energy」、「BLE」、「Bluetooth Smart」は全て同義、ということになります。ただし、どの言葉(あるいはロゴ)を使って対応状況を案内するかは機器メーカー次第です。文字表記の場合、以下のように表記がバラバラになっているのが問題点のひとつです(筆者が見たことのある例)。

  表記1 表記2表記3
Bluetooth 4.0のみ対応Bluetooth 4.0専用Bluetooth Low Energy専用Bluetooth Smart専用
Bluetooth 3.0および4.0両対応Bluetooth 4.0対応Bluetooth Low Energy(モード)対応Bluetooth Smart Ready 対応

なお、ホスト(親)となるパソコンやスマホ・タブレットにおいて、「Bluetooth 4.0に対応している」という場合、通常は従来規格にも対応した「Bluetooth Smart Ready」であることを意味しています。Bluetooth 4.0専用(Bluetooth Smart)機器は、原則としてホストにぶら下がるクライアント(子)側の機器が中心となります。そのため、最近のスマホなどでBluetooth 4.0対応と記されているものは、Bluetooth 4.0と従来規格に量対応していることになるので、従来規格の製品も接続できるわけです。


■Bluetooth 4.0(Bluetooth Smart)ならではの機能たち

筆者手持ちのFMP・PXP対応機器(ロジテック「LBT-MPVRU01」・筆者ブログから転載)

Bluetooth 4.0では、従来規格と同様に、「プロファイル」という、機器のカテゴリーごとの通信定義が用意されています。親子ともに同じプロファイルに対応して初めてペアリング(紐付け)ができます(紐付けできても、利用には別途アプリが必要な場合もありますが)。

この中で「Find Me Profile」(FMP)、「Proximity Profile」(PXP)、「Phone Alert Status Profile」(PASP)、「Alert Notification Profile」(ANP)あたりはBluetooth 4.0以降で採用されたもので、その省電力性を活かせるプロファイルとして特に注目です。

FMPはその名の通り「私(=機器)を探す」ために用意されています。FMP対応のタグや腕時計から検索信号を送出すると、ペアリング相手が音や振動でその存在を知らせてくれます。また、PXPはこれまたその名の通り「近くにいること」を検知するために用意されています。PXP対応機器同士をペアリングしておくと、相手機器が通信不可能、あるいは通信電波が微弱になったときに知らせてくれたり自動的に操作ロックをかけたりしてくれます。いずれも、機器の紛失を防止するための機能です。

上の画像は、かつてロジテックがiPhone 4以降のiPhone用として販売していたBluetooth 4.0専用のキーホルダーです。FMPとPXP両方に対応していて、iPhoneに限らず、FMP・PXP対応のAndroidスマホ・タブレットやWindowsパソコンでも使えます。キーホルダーのボタンを押すとペアリングしたFMP機器が反応しますし、WindowsパソコンではPXPを使ってキーホルダーを持って離席すると自動的に操作ロックがかかるように設定できます。このキーホルダーは、スマホやパソコンがよく荷物に埋もれる筆者としては、一時期欠かせないアイテムでした。

PASPとANPはともに通知を伝達するためのプロファイルです。パソコン・スマホ・タブレットに届いた各種通知をペアリング相手に伝達できます。例えば、腕時計で電話やメールの着信を知る、という芸当ができます。

これらのことは、従来規格でもアプリや機器の設計次第では可能でした。しかし、電力消費が大きくなってしまい、“実用的”であるかと言われるとそうでもない状況になっていました。電力消費を最大限抑えられるBluetooth 4.0と、専用プロファイルの登場で、電池持ちへの影響を最小限に抑え、実用的に使えるようになったのです。

ということで、今回はBluetooth 4.0のあれこれを書いてみました。この記事に対するご意見・ご感想はTwitterアカウント(@shoinoue)まで是非お寄せ下さい!!


記事執筆者プロフィール
せう
ブログ:せうの日記、Twitter:@shoinoue

静岡県三島市で産まれ、静岡県駿東郡長泉町で生まれ育ったアメリカ系日本人3世。見た目が日本人離れしている反動で、身の回りの道具は日本で開発されたものだらけである。ITmedia、andronaviを始めとするWeb媒体を中心に執筆活動を展開。自前のブログ「せうの日記」も宜しくお願いします。

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